米フロリダ州の高校で今週半ば、再び悪夢の銃乱射事件が発生した。米国の学校での発砲事件が、今年に入って18件目との驚きの事実に、日本メディアは一斉に銃社会の闇として報じた。ところが、肝心の米国では、銃規制の気運は乏しく、むしろ今回の容疑者が事前に犯行をほのめかしているとの通報にしっかり対応しなかった連邦捜査局(FBI)の手落ちを糾弾する方に焦点が当てられている。一方、日頃米国から人権問題を指摘されている中国では、このときとばかりに他国の人権政策をとやかく言う資格などないと、中国メディアが集中砲火を浴びせている。
2月17日付英
『Yahooニュース英国版』(
『ロイター通信』配信):「FBIがフロリダ州高校での銃乱射犯の行動を食い止められなかった失態を認めたことで怒りが沸騰」
FBIのクリストファー・レイ長官(51歳)は2月16日、フロリダ州南部パークランドの高校で発生した銃乱射事件について、容疑者が犯行をほのめかしているとの通報を事前に受けていながら、然るべき対応を怠ったことを認めた。
すなわち、犯人のニコラス・クルーズ(19歳)の知人が、同容疑者が高校に銃を持って押し入ると話していることを、1月5日にFBI宛に通報したが、FBIはマイアミ分署に捜査するよう手続きは取らなかったという。
この声明を受けて、多くの市民からFBIを非難する声が上がっており、また、フロリダ州のリック・スコット知事は、レイ長官(昨年、トランプ大統領が罷免したジェームズ・コウミー前長官の後任)は引責辞任すべきであると表明した。
なお、事件が起きた高校があるブロワード郡のスコット・イスラエル保安官は、直近の数年間にクルーズ容疑者に関して20件ほどの“通報”があったことを明かし、それがきちんと対応されたのかどうか精査すると語った。ただ、同保安官は、この事件を契機に法律の強化がなされるべきではなく、この犯罪を犯した同容疑者を責めるべきであるとも付言した。
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)ニュース』:「フロリダ州高校での銃乱射事件に関し、地元の保安官が“責めるべきは容疑者”と言及」
地元の捜査当局は、事件のあった高校の生徒3,200人及び同校教職員200人に事情聴取し、“何故犯人が事件を起こしたのか、また、何をしたかったのか”究明しようとしている。
ただ、地元のイスラエル保安官は、“米国は(法律上も捜査当局も)一切誤りを犯していない。唯一責められるべきはこの犯人”だとコメントしている。
一方、同日付米
『ミルウォーキー公共ラジオ放送』:「中国メディアは米国の銃乱射事件をどう報道しているか」
中国国営メディアはこれまで、中国における質の悪い人権問題から目を逸らさせようと、米国の問題や欠点について殊更大袈裟な報道をしてきている。そして、米国の銃乱射事件の場合は、この報道姿勢が以下のように更に激化する。
国営
『新華社通信』:米国の学校でまたも銃乱射事件という悪夢が発生。米社会の“銃創”は中々癒えそうにない。
上海
『新浪(シナ)英字ニュース』:犯人は、ナイフを振り回し、拳銃で遊ぶような問題児だった。
『チャイナ・ビジネス・ネットワーク』金融誌:最も多くの犠牲者が出た銃乱射事件の10件のうち3件が、直近5ヵ月間に発生している。
『環球時報』:頻繁に銃乱射事件が発生しても、米社会が無力であることに全世界が信じられない思いである。
なお、中国メディアはプロパガンダの意味合いもあって、米国による対中国政策について、“冷戦時代の精神構造”等と紛らわしい表現を使い、また、米中関係の緊張を悪戯に高めていると非難し、更に、米国が中国の勢力増大に根拠のない妄想を抱いていると論破しようとしている。
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