オーストラリアで大手IT企業に対するニュース使用料の支払いを義務づける法案の制定が進められている。これに反発した米フェイスブックは18日、オーストラリアでのニュース記事の投稿や共有を全面的に遮断した。しかし、緊急事態下で必要となる情報を載せている政府関係や慈善団体のページも遮断されたため、オーストラリア国内で批判の声が上がっている。
米テックニュースサイト
『ザ・ヴァージ』は、オーストラリアの多くの政府機関や慈善団体のフェイスブックページが、フェイスブックによるニュース投稿の遮断措置に巻き込まれているようだと報じている。ユーザーからは、気象局、西オーストラリア州消防緊急サービス局、クイーンズランド州保健局などのページの投稿が閲覧できなくなっているとの報告が寄せられている。メディア組織ではない、政府機関や、公共サービスの告知や警告のページにも閲覧制限がかけられてしまっている模様だ。
しかし、一部の省庁では、公衆衛生や安全への差し迫ったリスクを警告する手段としてフェイスブックを利用していることもあり、投稿や閲覧を禁止にすることで一般市民に害を及ぼす可能性もある。
女性向けメディア『マンマミーア』は、フェイスブックは世界的なパンデミックの真っ只中に、証拠に基づいたジャーナリズムへのアクセスを遮断しただけでなく、 多くのメンタルヘルスや家庭内暴力に対する支援を提供している団体や防犯用の地域組織のページ、環境保全団体などのページを遮断してしまったと非難している。
フェイスブックの担当者は、ニュース投稿や閲覧の遮断は政府関係のページには影響を与えるべきではないとコメントした上で、制限の範囲に対する線引きに混乱があったことを認めた。「法律はニュース記事の定義について明確な基準を示していないため、当社は法律を尊重するために広い定義を採用した。間違って遮断されたページは回復させる。」と説明している。
『ロイター通信』によると、フライデンバーグ財務相は記者会見で「フェイスブックは間違っている。遮断は不必要で高圧的な行為であり、オーストラリアでの評判を傷つけることになる。」とコメントした。また、法案を巡り週末にザッカーバーグ最高経営責任者と協議した際、ニュースの閲覧遮断については何も警告していなかったと述べた。
米『CBS』によると、フレッチャー通信相は、オーストラリア放送公社(ABC)に対し、オーストラリア政府が法案を引き下げることはないと述べた。そして、フェイスブックがこの立場を維持するのであれば、今後フェイスブックで見るニュースはファクトチェックなどを受けていない信ぴょう性の低いコンテンツを載せると伝えているようなもので、プラットフォームとしての信頼性に影響すると指摘した。
豪シンクタンク「Center for Responsible Technology」代表のピーター・ルイス氏も、フェイスブックの決定は、プラットフォームの弱体化を招くだろうと述べている。「フェイスブックの行動は、プライバシー保護、偽情報、データ保護における同社の失敗を意味し、政府の規制強化のためのより大きな推進力が必要になる」と語った。そして、事実に基づいたニュースが載らなくなるのであれば、どうでも良い情報の共有と陰謀論のためのプラットフォームになるだろうと述べた。
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