トランプ前大統領;今度は性暴力事件の被害女性から提訴【欧米メディア】(2022/11/27)
既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳、2017~2021年在任)は、2021年1月6日発生の議会乱入事件を扇動した嫌疑や、退任後に不当に機密文書等を私邸に持ち込んだ容疑で取り調べられている。そして今度は、同前大統領が実業家時代の昔に、トランプから性暴力を受けたとされた被害女性によって、当該事件に関わる暴行罪及び名誉棄損罪で改めて提訴されている。
11月25日付
『ロイター通信』は、「性暴力事件の被害女性、加害者のトランプを暴行罪及び名誉棄損罪で提訴」と題して、27年前にトランプ前大統領から強姦されたとする被害女性が、ニューヨーク州で制定された時限立法に基づいて、同前大統領を提訴したと報じている。
27年前にトランプ前大統領から性暴力の被害に遭ったとする女性著述家が11月24日、同氏を嘘つき呼ばわりした同前大統領に対して、名誉棄損罪で連邦ニューヨーク・マンハッタン地裁に提訴した。...
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11月25日付
『ロイター通信』は、「性暴力事件の被害女性、加害者のトランプを暴行罪及び名誉棄損罪で提訴」と題して、27年前にトランプ前大統領から強姦されたとする被害女性が、ニューヨーク州で制定された時限立法に基づいて、同前大統領を提訴したと報じている。
27年前にトランプ前大統領から性暴力の被害に遭ったとする女性著述家が11月24日、同氏を嘘つき呼ばわりした同前大統領に対して、名誉棄損罪で連邦ニューヨーク・マンハッタン地裁に提訴した。
当時、フランスの女性ファッション雑誌『エル』(1945年創刊)のコラムニストだったE.・ジーン・キャロル氏(78歳)で、マンハッタン地区の高級デパート「バーグドルフ・グッドマン」(1899年創業)において性被害を受けたことに対する暴行罪でも訴えている。
同氏の提訴は、ニューヨーク州で制定された「成人サバイバー法」に基づくもので、同法によって、時効が成立している性暴力疑惑について、1年間に限って被害者による提訴が受け付けられることになっている。
同氏は2019年6月に初めて事件を公表したが、トランプ前大統領がこの話を否定しただけでなく、同氏は“自分の好み”でもないとまで蔑んだことから、同年11月に名誉棄損で同前大統領を訴えている。
トランプ前大統領は今年10月12日にも、自身が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」(2022年設立)上で、同氏が“デマ”及び“嘘”を言い触らしていると全面否定している。
このことから、同氏が改めて同前大統領を名誉棄損罪で提訴したものである。
同氏の2019年の提訴は、トランプが大統領職にあったことから免責されると主張しているため、目下、マンハッタン地裁の判断待ちである。
もし、同地裁がトランプの訴えを認めれば、同氏の2019年提訴は棄却されることになる。
しかし、今回新たになされた提訴は、トランプが既に一般人になっていることから、免責されずに審理がなされることになる。
なお、2019年の最初の提訴は、同地裁ルイス・カプラン判事(77歳、1994年就任)が来年2月6日に審理する予定となっているが、原告・被告双方の代理人から期日延期の申し立てがなされているため、順延される可能性がある。
すなわち、原告代理人のロベルタ・カプラン弁護士(56歳)が、今回の提訴と併せて審理できるよう、4月10日の期日を申し立てた一方、被告代理人のアリーナ・ハッバ弁護士(38歳)は、トランプが新たな提訴に関わる代理人を任命していないので、5月8日を期日とするよう申し立てている。
ただ、同判事はハッバ代理人に対して、“依頼人(トランプ)には、今回の提訴に関わる代理人を任命するのに十分すぎる時間があるはずだ”とコメントしている。
いずれにしても、同判事は次回開廷期日について、来週早々に判断を下すとしている。
同日付『BBCニュース』は、「トランプ前大統領に27年前に強姦されたとして女性が提訴」として、その背景について詳報している。
キャロル氏が、改めてトランプ前大統領に対して、27年前に発生した性暴力事件に関わる暴行罪と名誉棄損罪で訴える拠り所となった「成人サバイバー法」は、11月24日に発効したばかりのニューヨーク州法である。
同法は、被害者の年齢が事件発生時に18歳を超えていて、既に時効が成立している事件を対象にしている。
同法が制定されるに至ったのは、2017年に世界的に広がった#MeToo運動(注後記)が契機となっている。
すなわち、これまで泣き寝入りしていた性暴力被害者を救済するため、1年間に限って、時効が成立している古い事件であっても訴えを受け付ける、としたものである。
なお、原告代理人のカプラン弁護士は11月25日、前日に起こした新たな訴訟は、トランプ前大統領の暴行容疑をめぐって責任を追及するのが目的だと表明した。
一方、被告代理人のハッバ弁護士は、被害を公表する個人を尊重するとしながらも、“本件提訴は、法律の目的を乱用するものだ”と非難するコメントを出している。
(注)#MeToo運動:今まで沈黙させられてきた性被害者が、セクハラや性暴行事件についてSNSを通じて被害を告白し、加害者を告発する運動。2006年に黒人女性を支援するNPO活動団体がMeTooを提唱して地道な活動を行っていたが、2017年10月に『ニューヨーク・タイムズ』紙記者が特集した、著名映画プロデューサーの数十年に及ぶセクハラ疑惑を告発する記事を契機として、米国から全世界に広がっている。
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米黒人解放運動指導者暗殺共謀犯に仕立て上げられ20年余り服役した黒人イスラム信者らとNY州・市が3,600万ドルの補償金支払いで和解【欧米メディア】(2022/11/01)
黒人解放運動指導者として活動していたアフリカ系米国人のマルコムX(享年39)は1965年、袂を分かったイスラム運動組織「ネーション・オブ・イスラム(NOI、注後記)」の信者3人によって暗殺された。その際、犯行後にその場で取り押さえられた実行犯とは別に、共謀犯として逮捕・起訴された2人の黒人信者は、20年余り投獄されていたが、1980年代に漸く仮釈放された後、冤罪を訴えて裁判を起こしていていて、昨年11月に漸く無実であることが証明された。そしてこの程、冤罪によって投獄されたこと等への補償金がニューヨーク州及び市から当事者に支払われることになった。
10月30日付
『ロイター通信』は、「マルコムX殺害の犯人とされた黒人2人にニューヨーク州・市が補償金支払いで和解」と題して、1965年に発生したマルコムXの殺害事件に関し、無実の罪で20年余り投獄された黒人イスラム教徒らに対して、NY州及び市が補償金として計3,600万ドル(約54億円)を支払うことで和解したと報じている。
1965年に発生した黒人解放運動指導者マルコムXの暗殺事件に関し、共犯に仕立て上げられて20年以上服役した後、昨年11月に漸く無罪を勝ち取った黒人イスラム教徒及び遺族に対して、NY州・市が合計3,600万ドルの補償金を支払うとの和解が成立した。...
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10月30日付
『ロイター通信』は、「マルコムX殺害の犯人とされた黒人2人にニューヨーク州・市が補償金支払いで和解」と題して、1965年に発生したマルコムXの殺害事件に関し、無実の罪で20年余り投獄された黒人イスラム教徒らに対して、NY州及び市が補償金として計3,600万ドル(約54億円)を支払うことで和解したと報じている。
1965年に発生した黒人解放運動指導者マルコムXの暗殺事件に関し、共犯に仕立て上げられて20年以上服役した後、昨年11月に漸く無罪を勝ち取った黒人イスラム教徒及び遺族に対して、NY州・市が合計3,600万ドルの補償金を支払うとの和解が成立した。
双方の代理人デビッド・シェイニーズ弁護士(冤罪・公民権裁判が専門)が10月30日に明らかにした。
一人目のムハンマド・アジズ氏(84歳、妻及び子供6人)は、冤罪で20年以上投獄されていただけでなく、1980年代半ばに仮釈放後も殺人犯として世間から非難される日々を55年以上も送ったことから、刑事司法制度における黒人差別が冤罪の原因だったとして、4千万ドル(約60億円)の賠償金を申し立てていた。
また、二人目は、無罪判決が出る前の2009年に死去していた故カリル・イスラム氏(享年
74)で、同じく20年以上服役したことから、同氏の遺族が同様4千万ドルの賠償金請求をしていた。
今回の和解成立に関し、シェイニーズ弁護士は『ロイター通信』のインタビューに答えて、NY市が2,600万ドル(約39億円)、NY州が1千万ドル(約15億円)支払うことで和解していて、アジズ氏及び故イスラム氏遺族に均等に支払われるとコメントしている。
同弁護士は、“アジズ氏及び故イスラム氏にとって、冤罪のために人生のほとんどが奪われてしまったので、当該補償金は当然の酬いだ”とも言及した。
一方、NY市法務部のニック・パオルッチ広報担当は10月30日、『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“今回の和解は、何十年も投獄された挙句、長い間殺人犯との汚名を着せられた人たちへの公正な措置だ”とコメントしている。
ただ、NY州当局からのコメントは得られていない。
1950年代、マルコムXはNOIの広報担当であったが、その後NOI幹部と対立するようになって1964年にNOIから脱退した上で、別のイスラム運動組織を立ち上げたことから、NOIの反感を買って、NOI信者3人によって1965年2月に銃殺されてしまっていた。
この暗殺事件の実行犯であり、現場で取り押さえられたムジャヒド・ハリム(81歳)は、アジズ及びイスラムは無実だと証言していたが、マルコムX殺害に加わった2人の共犯者のことを明かさなかったため、アジズ・イスラムが共犯者として裁かれていた。
なお、ハリム自身も2010年に仮釈放されている。
10月31日付『AP通信』は、「マルコムX殺害犯にされた黒人らが3,600万ドルの補償金を勝ち取る」として、詳報している。
殺害犯とされた黒人らの賠償金請求訴訟を代理していたシェイニーズ弁護士は10月30日、NY市が2,600万ドル、NY州が1千万ドルの補償金を払うことで和解が成立したと表明した。
同弁護士は、“アジズ氏、故イスラム氏及びその家族は、50年以上も殺人犯として責められる堪えがたい日々を過ごしてきたので、この代償として当然の酬いだ”と語った。
同弁護士は更に、“州及び市当局とも、昨年11月の無罪判決が出るまで非常に長い時間を浪費していたことから、高齢となった被害者らに可及的速やかなる補償が必要ということで対応してくれた”としながらも、“今回の事件を契機に、警察も検察も冤罪を出さないよう、慎重かつ念入りな捜査等が重要であることを肝に銘じるべきである”とも強調した。
(注)NOI:世界恐慌中の1930年にデトロイトで創始された、アフリカ系米国人のイスラム運動組織。黒人の経済的自立を目指す社会運動であり、白人社会への同化を拒否し、黒人の民族的優越を説く宗教運動でもある。
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