12月27日付米
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース(2006年設立)は、「プーチン批判の大物政治家がインドのホテルで不審死」と題して、滞在中のインドのホテルで、一緒に旅行していたプーチン批判の2人の政治家が立て続けに不審死を遂げていると報じた。
ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)のウクライナ軍事侵攻を公然と批判していた大物政治家が12月24日、滞在中のインドのホテルで不審死を遂げた。
パベル・アントフ議員(65歳、2019年就任の国家院議員)で、ソーセージ販売会社を営む富豪政治家で、休暇で訪れていたインド東端オディシャ州ラヤガダのホテルの3階の窓から“不審な”転落をして死亡した。
英国メディア『ザ・テレグラフ』紙報道によると、同議員はホテル前庭のプール側で血を流して死んでいるのが発見されたという。
同紙は、地元メディアが警察関係者から聴いた話として、同じホテルで数日前に一緒に滞在していた同僚議員の突然死を悔やんで自殺したとの見立ては疑わしいと報じている。
12月22日に死亡したのはウラジーミル・ブダノフ議員(61歳)で、1階の自室で死んでいるのが発見されている。
死因は心臓発作とされているが、自室内には空のワイン瓶が複数本転がっていたという。
西ベンガル州コルカタ駐在のアレクセイ・イダムキン総領事が、ロシア国営メディア『タス通信』に宛てた声明によると、“アントフ議員は窓から転落したと聞いているが、原因等詳細についてオディシャ州警察の捜査報告を待っているところだ”としている。
プーチン批判で知られる同議員は今年6月、ウクライナの戦闘で犠牲になっている住民らについて触れ、“これはテロ行為以外の何物でもない”とSNSに投稿していた。
しかし、その後に猛批判を恐れたアントフ議員は当該投稿を削除し、“不幸な勘違い”であったと言及している。
この事件を受けて、SNS上では、“うかつに窓に近づくべきではない、ということがまたしてもパベル・アントフによって証明された”とツイートされている。
その上で、“似たような事案が余りに多過ぎて、今や数を正確に数えられない”と言及されている。
同日付インド『ザ・ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年創刊の英字紙)は、「ロシア人政治家パベル・アントフ氏、オディシャのホテルで死亡」と詳報している。
パベル・アントフ氏が、オディシャ州ラヤガダのホテルで2日前に急死したウラジーミル・
ブダノフ氏に続いて死亡しているのが発見された。
同氏は、65歳の誕生日を祝うためもあって、同ホテルに他の同行者とともに滞在していた。
捜査に当たっている地元警察のビブカナンダ・シャルマ署長は、同氏の遺体は12月25日に発見されていて、遺族の了承を得て12月26日に荼毘に付したと述べている。
ロシア『タス通信』報道によると、アントフ氏の同僚であるヤチェスラフ・カルトゥキン副議長は同氏の急死を知って、“私の同僚であり、功成り名を遂げた実業家・慈善家であるアントフ氏の死を、ロシア議会の議員らを代表して追悼したい”とSNS上に投稿したという。
また、ウラジーミル・キセリョフ議長も、“大変な逸材を失ってしまった”と投稿しているという。
シャルマ署長によると、“アントフ氏一行の4人は、同ホテルに12月21日にチェックインしているが、ブダノフ氏が心臓発作で12月22日に亡くなった”とし、“アントフ氏は同僚の死亡にショックを受けていたところ、今度は同氏が12月25日に死亡しているのが発見された”と言及した。
一方、随行していたロシア人ツーリストのガイドは、“チェックイン当日、ブダノフ氏は体調が優れなかったが、翌朝に自室で意識不明の状態で発見されたので、即刻警察を呼んだ”と証言している。
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パキスタン(1947年英国より独立)では、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)主導で始められた中国・パキスタン経済回廊インフラプロジェクト(CPEC、注後記)建設工事に従事する多くの中国人労働者が就業している。しかし、政情不安な同国においては、同プロジェクト等に反発している反政府勢力のテロが頻発しており、ついに中国側要請で同従業員らの移動に防弾車を使用することが決まった。
11月6日付インド
『ザ・タイムズ・オブ・インディア』紙(1838年創刊の英字紙)は、「パキスタン在のCPEC従事の全中国人労働者、テロ対策のため移動に防弾車使用」と題して、中国側要請により、CPECインフラプロジェクト建設工事に従事する全中国人労働者の移動に防弾車を使用することが決まったと報じている。
パキスタン及び中国はこの程、中国側が安全面での懸念を表明したことから、CPECインフラプロジェクト建設工事のためにパキスタンに滞在している中国人労働者の移動について、テロ対策の一環で防弾車を使用することで同意した。
地元紙『ジ・エキスプレス・トリビューン』(2010年創刊の英字紙)が11月6日に報じたもので、CPECの第11回合同調整委員会(JCC)の議事録草案によると、“CPECに従事する全中国人労働者の安全確保のために、移動は全て防弾車を使用することが決定された”と記されている。
また、同時に、“両国は、テロ対策のために法執行官及び捜査官を増強することも合意した”という。
習近平国家主席は先週、訪中したシャバズ・シャリフ首相(71歳、2022年就任)と会談した際、CPECに従事する中国人労働者の安全に“深い懸念”があると伝えた上で、彼らのために“信頼かつ安全な環境整備”を求めると要求していた。
総額600億ドル(約8兆8,200億円)のCPECプロジェクトは、習国家主席が主導する「一帯一路経済圏構想(BRI)」の一部として推進されているものであるが、同プロジェクト下の様々な建設工事に携わる中国人従業員の保安が非常に問題視されてきていた。
そこで、今回のJCC会議において合意がなされた訳だが、中国側はその他、パキスタン側の法執行機関の能力増強のために保安関連装備品を提供することを約している。
また、中国人が犯罪に巻き込まれた際の捜査迅速化のために、中国側の支援を得て、パキスタン国家警察傘下の国家犯罪科学局(NFSA)の近代化も実施することが決まっている。
なお、CPECプロジェクト以外の事業に関わる中国人の安全も侵されていることから、両国は別途、合同技術専門家作業部会(JTEWG)を立ち上げて、これらの中国人従業員の安全確保のために起用すべき民間警備会社の評価を行わしめることも合意している。
同日付パキスタン『パキスタン・テレグラフ』紙は、「パキスタン在のCPEC従事の中国人労働者、今後防弾車で移動」と報じている。
CPECの第11回JCCで、パキスタン在の中国人従業員の安全確保のために、いくつかの事項について両国が合意した。
しかし、これまでの慣例と違って、未だ当該JCC議事録が双方の高官によって署名されていない。
アーサン・イクバル内務相(63歳、2021年就任)によると、JCC議事録は会議後に可及的速やかに双方によって署名されていたが、“今回、シャリフ首相が僅か24時間の訪中という忙しい行程であったことから、当該議事録の署名手続きが進められなかった”という。
同相によると、“JCC会議の他、17件の協調案件に関わる会合も持たれていることから、とても手が回らなかった”という。
なお、JCC会議の議事録署名はまだだが、合意事項については可及的速やかに取り進められるという。
(注)CPEC:2015年に立ち上げられた、新疆ウィグル自治区南西端のカシュガルから、中国・パキスタン国境を越えてパキスタン南西岸のグワダル港までを繋ぐ、約3千キロメートルの道路・鉄道を敷設するプロジェクト。BRIの一環で取り進められているもので、インドネシア・マラッカ海峡を経ずに中国輸出入貨物の中国~アラビア海間の往復運送を可能とするインフラ建設が目的。
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