パキスタン(1947年英国より独立)では、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)主導で始められた中国・パキスタン経済回廊インフラプロジェクト(CPEC、注後記)建設工事に従事する多くの中国人労働者が就業している。しかし、政情不安な同国においては、同プロジェクト等に反発している反政府勢力のテロが頻発しており、ついに中国側要請で同従業員らの移動に防弾車を使用することが決まった。
11月6日付インド
『ザ・タイムズ・オブ・インディア』紙(1838年創刊の英字紙)は、「パキスタン在のCPEC従事の全中国人労働者、テロ対策のため移動に防弾車使用」と題して、中国側要請により、CPECインフラプロジェクト建設工事に従事する全中国人労働者の移動に防弾車を使用することが決まったと報じている。
パキスタン及び中国はこの程、中国側が安全面での懸念を表明したことから、CPECインフラプロジェクト建設工事のためにパキスタンに滞在している中国人労働者の移動について、テロ対策の一環で防弾車を使用することで同意した。...
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11月6日付インド
『ザ・タイムズ・オブ・インディア』紙(1838年創刊の英字紙)は、「パキスタン在のCPEC従事の全中国人労働者、テロ対策のため移動に防弾車使用」と題して、中国側要請により、CPECインフラプロジェクト建設工事に従事する全中国人労働者の移動に防弾車を使用することが決まったと報じている。
パキスタン及び中国はこの程、中国側が安全面での懸念を表明したことから、CPECインフラプロジェクト建設工事のためにパキスタンに滞在している中国人労働者の移動について、テロ対策の一環で防弾車を使用することで同意した。
地元紙『ジ・エキスプレス・トリビューン』(2010年創刊の英字紙)が11月6日に報じたもので、CPECの第11回合同調整委員会(JCC)の議事録草案によると、“CPECに従事する全中国人労働者の安全確保のために、移動は全て防弾車を使用することが決定された”と記されている。
また、同時に、“両国は、テロ対策のために法執行官及び捜査官を増強することも合意した”という。
習近平国家主席は先週、訪中したシャバズ・シャリフ首相(71歳、2022年就任)と会談した際、CPECに従事する中国人労働者の安全に“深い懸念”があると伝えた上で、彼らのために“信頼かつ安全な環境整備”を求めると要求していた。
総額600億ドル(約8兆8,200億円)のCPECプロジェクトは、習国家主席が主導する「一帯一路経済圏構想(BRI)」の一部として推進されているものであるが、同プロジェクト下の様々な建設工事に携わる中国人従業員の保安が非常に問題視されてきていた。
そこで、今回のJCC会議において合意がなされた訳だが、中国側はその他、パキスタン側の法執行機関の能力増強のために保安関連装備品を提供することを約している。
また、中国人が犯罪に巻き込まれた際の捜査迅速化のために、中国側の支援を得て、パキスタン国家警察傘下の国家犯罪科学局(NFSA)の近代化も実施することが決まっている。
なお、CPECプロジェクト以外の事業に関わる中国人の安全も侵されていることから、両国は別途、合同技術専門家作業部会(JTEWG)を立ち上げて、これらの中国人従業員の安全確保のために起用すべき民間警備会社の評価を行わしめることも合意している。
同日付パキスタン『パキスタン・テレグラフ』紙は、「パキスタン在のCPEC従事の中国人労働者、今後防弾車で移動」と報じている。
CPECの第11回JCCで、パキスタン在の中国人従業員の安全確保のために、いくつかの事項について両国が合意した。
しかし、これまでの慣例と違って、未だ当該JCC議事録が双方の高官によって署名されていない。
アーサン・イクバル内務相(63歳、2021年就任)によると、JCC議事録は会議後に可及的速やかに双方によって署名されていたが、“今回、シャリフ首相が僅か24時間の訪中という忙しい行程であったことから、当該議事録の署名手続きが進められなかった”という。
同相によると、“JCC会議の他、17件の協調案件に関わる会合も持たれていることから、とても手が回らなかった”という。
なお、JCC会議の議事録署名はまだだが、合意事項については可及的速やかに取り進められるという。
(注)CPEC:2015年に立ち上げられた、新疆ウィグル自治区南西端のカシュガルから、中国・パキスタン国境を越えてパキスタン南西岸のグワダル港までを繋ぐ、約3千キロメートルの道路・鉄道を敷設するプロジェクト。BRIの一環で取り進められているもので、インドネシア・マラッカ海峡を経ずに中国輸出入貨物の中国~アラビア海間の往復運送を可能とするインフラ建設が目的。
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『タイムズ・オブ・インディア』によると、人民解放軍の連隊長であった聖火ランナーは、中国とインドの間で争われているガルワン渓谷での両軍の衝突の際、中国部隊を監督する任務を負っていた。衝突の際、少なくとも20人のインド人と4人の中国兵が死亡した。中国政府が自国の犠牲者を認めたのは8カ月後だった。
中国の国営メディア「グローバル・タイムズ」は、戦闘で頭に重傷を負った中国兵士を「英雄」として祭り上げ、大会の1200人の聖火ランナーの中に含まれていると報じた。...
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『タイムズ・オブ・インディア』によると、人民解放軍の連隊長であった聖火ランナーは、中国とインドの間で争われているガルワン渓谷での両軍の衝突の際、中国部隊を監督する任務を負っていた。衝突の際、少なくとも20人のインド人と4人の中国兵が死亡した。中国政府が自国の犠牲者を認めたのは8カ月後だった。
中国の国営メディア「グローバル・タイムズ」は、戦闘で頭に重傷を負った中国兵士を「英雄」として祭り上げ、大会の1200人の聖火ランナーの中に含まれていると報じた。しかし、インド側は冷ややかな反応を示している。インドの著名ジャーナリスト、アビシェク・バラ氏は「中国の攻撃的な情報戦が続いている。死者を発表するのにしばらく時間がかかったが、今や兵士が聖火ランナーになった。」とツイートした。
両国は2020年の衝突の後、ガルワン渓谷とその周辺に数万人の兵士を追加で投入した。昨年末に行われた高官レベルの協議では、この地域の緊張を緩和することができず、インドのニュースサイト「The Wire」は、中国兵士が聖火リレーに参加したことは、中国との「芳しくない緊張緩和の更なる印」だと述べた。兵士は、12月に中国の国営放送CCTVに出演し、「戦場に戻り、再び戦う準備ができている」とも語っていた。
印紙『インディアン・エキスプレス』は、中国政府は、負傷した兵士を聖火ランナーにすることで、英雄に仕立て上げようとし、欧米5カ国(アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、リトアニア)の大会ボイコットを拒否し、参加者を1人送ったインドを嘲笑うための意図的なものだと思われる、と報じている。そして、中国がプロパガンダの一環として、ガルワン渓谷を持ち出した心理作戦は今回が初めてではない、と伝えている。
インド軍が、インドと中国の兵士が実質支配線上のいくつかの地点で新年の挨拶を交わす画像を公開してからちょうど1週間後、中国国有メディアの記者が、中国軍が渓谷で中国国旗を広げている動画を掲載した。記者は、「2022年の元旦、ガルワン渓谷に中国の国旗が上がる。この国旗はかつて北京の天安門広場に掲揚されたもので、とても特別なものだ。」とツイートした。また、数週間前には、インドとの国境地帯を担当する中国軍司令部が、中国版ツイッターウェイボーで、「2月1日、通知を再投稿した人の中の10人に、ガルワン渓谷の石をプレゼントとして送ります」と告知したと報じられた。
米オンラインメディア『ブライトバート』は、中国国営新聞「環球時報」が2日、聖火ランナーを務めた中国兵士を大きく取り上げていることを指摘し、「現在、両国間の緊張がエスカレートしていないことを考えると、中国の最近の最大の軍事的損失の1つをオリンピックのイベントで強調するというのは奇妙な選択である。特に、インドは、世界で最も人口の多い国の一つであり、世界有数の険しい山々があるが、冬季オリンピックでの存在感は極めて限定的なものである。北京大会に派遣された選手は、スキーのアリフ・カーン1名のみである。」と伝えている。
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