現在66歳のガンビール・シンさんは、北東部マニプール州の州都インパールの出身で、26歳だった1978年、自宅を出た後に行方がわからなくなった。その後家族との連絡は完全に途絶え、何の音沙汰もなかったという。
そして故郷から3,300キロ離れたムンバイの路上で、ボリウッド映画の劇中歌を歌う白いものが混ざった髭を生やした男性を撮影した動画が、昨年10月にユーチューブに投稿された。ボリウッドとは、ムンバイのインド映画産業の総称で、ムンバイの旧名のボンベイと米国のハリウッドを合わせたものである。
その動画の中で、男性は自分のことをマニプールのシンと名乗っていた。それを見たある視聴者がインパールの地元団体に連絡し、彼らがシンさんの家族に知らせたところ、この男性が身内であることが確認された。そしてインパールの警察から連絡を受けたムンバイの警察が、男性を同市郊外のバンドラにある駅の外で発見した。
男性の映像を撮影し、ユーチューブに投稿したストリート・フォトグラファーのシャキール氏は、「男性は路上で古いヒンドゥーの歌を歌い、物乞いをして金を恵んでもらっていた。」と説明している。男性は建築現場で働いていたが、2度ほど事故に遭い、酒におぼれる生活になったと語っていたという。シャキール氏は男性を頻繁に見かけたため、ある日彼が歌っているところを撮影することにした。
地元紙のタイムズ・オブ・インディアによれば、シンさんは元陸軍士官で、短い間結婚生活を送った妻と離婚し、その後インパールを離れた。動画は約5万5,000回再生され、身元の確認に役立った。シンさんの兄弟は「甥たちの1人が映像を見せてくれた時、自分の目を疑った。再び生きて会えるという希望はすっかり失っていた。」と語っている。
シャキール氏は、「この話は一筋の希望を与えてくれる。もし撮影した動画がある男性の人生を変えることができれば、これほど大きな奇跡はない。」と話している。家族や近所の人々は、早速シンさんが住む家をインパールに用意しているそうだ。
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米国は、世界経済の牽引者だけでなく米国型モラルを押し付けようとする、上から目線の対応を取ったとして、特にイスラム過激派や北朝鮮の独裁者から忌み嫌われている。その米国と覇権争いをしている中国は、札束攻勢で、また、ときには武力による威圧で、中国支持者を増やそうとしている。しかし、インドメディアの評価では、最良の友人はパキスタンくらいで、他の周辺国は軒並み敵対国だったり、中には友人を装ってはいるが裏では中国を敵視する国もいるという。8月19日付Globali「中印間の衝突、国境付近の睨み合いだけでなくメディアでも中傷合戦」で触れたとおり、インドメディアにとっては、中国が現在最も忌み嫌う相手となっている模様である。
8月21日付
『タイムズ・オブ・インディア』紙:「中国の隣人:友好国もあれば敵国、ないしは友好国を装う敵国も」
中国の周辺の国々は、かつては中国の政策に共感できず抵抗していた。しかし、経済成長を遂げて大国の仲間入りをした中国が、周辺国への経済支援を強めていくに連れて、その抵抗は弱まっている。ただ、国境紛争や領土問題を通じて、日本や台湾との連携で、インド・モンゴル・ベトナムの反中国活動が高まっていることも事実であろう。
以下は、国毎の対中国関係の評価である。
(最友好国)
●パキスタン(接している国境なし):パキスタンが実効支配しているカシミール地方のギルギット・バルティスタン州(パキスタン北端)へのインド侵攻に対して、中国がパキスタン支援。また、アフガニスタンとの国境問題再燃について中国が憂慮。
(友好国)
●カザフスタン(同1,783キロメーター):国境問題につき、中国側が満足のいく形で合意済み。ロシアの同盟国だが、世界の原油埋蔵量の3%(300億バレル)を有する同国は、中国が推す一帯一路経済政策を全面支持。なお、中国はホルゴス(東端にある国境付近の都市)に経済開発特区を設け、世界最大のドライポート(内陸の複合一貫輸送のための積み替えターミナル)に仕立て上げる計画。
●北朝鮮(同1,420キロメーター):中国は食料含めて最大の支援国。ただ、最近の金正恩(キム・ジョンウン)暴走振りに手を焼く。
●カンボジア(同なし):長期にわたり中国の同盟国。
●フィリピン(同なし):かつては最も批判的・敵対的な国であったが、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の下、中国寄り政策に転換。
●ラオス(同423キロメーター):中国は、インフラ開発支援のみならず、貧しい同国から多くの象を買い上げ。
●ミャンマー(同2,185キロメーター):新リーダーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が中国との通商拡大を模索。結果、中国が同国にとって、最大の港湾・道路・発電等インフラ開発支援国。
(中立国)
●キルギスタン(同858キロメーター):元々中国は、同国のほとんどを中国領土と主張。キルギス人は中国内の56ある少数民族のひとつと理解。中国は現在、キルギスからの移民の流入や、新疆ウイグル自治区(シンジャン)への武器の密輸を懸念。なお、同国には米国とロシアの基地がある。
●タジキスタン(同414キロメーター):130年続いた国境問題が、パミール高原(ペルシャ語で世界の屋根の意)内の約1,000平方キロメーターを中国領土とすることで決着。目下、中国が同国へのエネルギー・インフラへの最大の投資元。
●アフガニスタン(同76キロメーター):1963年の合意にも拘らず、中国は、ワハーン回廊(かつてのシルクロードの重要な経路)があるバダプシャーン州(同国東端)へ侵入してきている模様。
●ネパール(同1,236キロメーター):インドも自国領土と主張していたリプ・レク峠(北西端)に関し、1963年に中国・ネパール間ではネパールに帰属することで合意。しかし、中国が高速度鉄道建設等でネパールとの通商増になっていることに、インドが懸念。
●ブータン(同760キロメーター):中国は同国の東端・西端の約270平方キロメーターを中国領土と主張。同国は、中国及びインドと等間隔での関係を築いているが、ドクラム台地(インド北端のシッキム州東側の土地で、現在中国・インド両軍が2ヵ月余り睨み合い)については自国領土と主張。
●マレーシア(同なし):南沙(スプラトリー)諸島内で領有権問題を抱える。
(敵対国)
●モンゴル(同4,677キロメーター):ハルトマー・バトトルガ新大統領は、中国批判の急先鋒。同国輸入の90%、輸出の30%を中国に負う態勢見直しを表明。一方、インドとの関係強化を模索。
●韓国(同なし):韓国が進める米軍基地への終末高高度ミサイル迎撃システム(THAAD)配備に関し、中国から様々な嫌がらせを受ける。また、東シナ海の領海問題も抱える。
●日本(同なし):経済及び領土問題で最大の敵対国。
●台湾(同なし):中国はひとつの中国を主張。しかし、依然台湾は自国の通貨・軍隊を保有。ただ、国連加盟193ヵ国のうち、台湾を独立国として認めているのは僅か19ヵ国。
●ブルネイ(同なし):南沙諸島内で領有権を主張。
●ベトナム:南沙及び西沙(パラセル)諸島内で領有権問題を抱える。中国の反発にも拘らず、スペイン企業の支援を受けて独自の石油探査活動実施中。
(複雑な関係)
●ロシア(同3,645キロメーター):習主席は、目下中ロは歴史上最も近しい関係にあるとする。しかし、中国の経済的台頭で、旧ソ連邦諸国含めて、周辺国への中国進出に対して懸念を抱く。
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