米・英・ロ・中・韓国メディア;日韓合意(慰安婦問題)がもたらすもの
昨日の
Globali及び【
時流】の中で触れたとおり、年末ぎりぎりに日韓両国間で合意をみた慰安婦問題に関し、日・韓・米のリーダーはもとより、国連他の国際機関も評価している。ただ、日韓両国内にも反対論が出ていることでもあり、本件合意はゴールではなくスタートだと捉える必要があろう。日韓合意につき、各国メディアの続報を追った。
12月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』国営放送は、「日韓合意は、北朝鮮対策に有効」との見出しで、「米国務省高官は、日韓合意に伴い、日米韓の連携がより深まることになるため、北朝鮮の核問題を含めた地域の脅威となる問題に対処する上で、非常に有効である、と語った。また、ケリー国務長官も、これで日米韓の経済のみならず安全保障での協力関係に弾みがつくと述べた。」と報じた。
同日付米
『ワシントン・ポスト』紙はその社説で、「今回の合意に関し、朴(パク)大統領は自国の反対派から、日本が法的責任を認めていないのに中途半端な合意をしたと責められ、一方、安倍政権を支える与党内のナショナリストからは、1965年の日韓基本条約で賠償等は済んでおり、これ以上のお詫びは不要との声も出ている。...
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12月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』国営放送は、「日韓合意は、北朝鮮対策に有効」との見出しで、「米国務省高官は、日韓合意に伴い、日米韓の連携がより深まることになるため、北朝鮮の核問題を含めた地域の脅威となる問題に対処する上で、非常に有効である、と語った。また、ケリー国務長官も、これで日米韓の経済のみならず安全保障での協力関係に弾みがつくと述べた。」と報じた。
同日付米
『ワシントン・ポスト』紙はその社説で、「今回の合意に関し、朴(パク)大統領は自国の反対派から、日本が法的責任を認めていないのに中途半端な合意をしたと責められ、一方、安倍政権を支える与党内のナショナリストからは、1965年の日韓基本条約で賠償等は済んでおり、これ以上のお詫びは不要との声も出ている。更に両国には、小さな島の領有権問題(編注;日本海とも、韓国の主張する東海とも、更には竹島・独島との島名も言及せず)、歴史問題に関する両国教科書の記載事項の不合意等の問題が未解決である。しかし、ともかく大きな懸案のひとつである慰安婦問題に区切りがついたことから、両国間の友好関係が強化される間に、それらの問題も解決に導かれることが期待される。」と伝えた。
同日付英
『メール・オンライン(デイリィ・メール電子版)』は、「国連事務総長、日韓合意を歓迎」との見出しで、「国連の潘(パン)事務総長は、日韓双方の首脳の努力によって、慰安婦問題に決着がついたことを歓迎した。」とし、「ただ、岸田外相は、日本が拠出する10億円(830万ドル)は、元慰安婦の窮状を支援するためのものであって、賠償金ではないと明言している。」と報じた。
同日付ロシア
『スプートニク』オンラインニュースは、「米国務長官、慰安婦問題での日本のお詫びを歓迎」との見出しで、「ケリー国務長官は、慰安婦問題に関する日韓合意に当り、日本側がお詫びを伝えたことに関し歓迎すると語った。また、日韓合意について、米国はもとより、国際社会も評価しようと述べた。」と伝えた。
一方、12月29日付中国
『中国英字オンラインニュース』(
『新華社通信』記事引用)は、「慰安婦問題解決には、日本側から更なる誠実な行動が必須」との見出しで、「戦時中に駆り出された慰安婦は20万人に上ると言われ、朝鮮半島だけでなく、中国や他の東南アジア諸国から連れ出されている。従って、日本側は、韓国とのみ本件に合意に達したことに満足せず、日本が犯した侵略戦争の相手国に対して、更なる誠実な対応、責任を果たしていくことが必要である。特に、日経が最近行った調査で、57%もの日本人が、慰安婦に関わる償い等は不要と回答していることから、最近の日本の右傾化が読み取れるため、これでは隣国の人達には理解されないだろう。」と報じた。
更に、同日付韓国
『コリア・ヘラルド』韓国英字新聞は、「北朝鮮、日韓合意を非難」との見出しで、「北朝鮮は、慰安婦問題に関わる日韓合意を“屈辱的な合意”であって、日本が犯した残虐行為の歴史を糊塗するもの以外の何物でもないとして非難した。そして、慰安婦の被害者は北朝鮮にも存在するとし、日本はこれにもきちんと対応し、かつ、全朝鮮人が理解できる内容で責任を果たすことが必要であるとしている。」と伝えた。
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中・韓国メディア;日韓合意、韓国は本当にもう蒸し返さない?
12月28日付
Globali「慰安婦問題が最終的な合意」の中で、“ソウルで行われた日韓外相会談で、慰安婦問題が最終的な合意に至った。日本政府が10億円の資金を提供し、元慰安婦を支援する財団を創設し、両国外相は最終的かつ不可逆的な解決とすることを確認したと共同発表した”と報じた。しかし、合意文書の作成が、韓国国内の世論の動向を懸念する韓国側の要請で見送られている。メディアからの質問も受け付けない、両外相の声明文読み上げのみの異例な形式となった合意事項は、(日韓合意点という)“ゴールポスト”をこれまで何度も自国内の事情で勝手に後退させてきた韓国によって、果たして守られるのだろうか。既報の米・豪州メディア以外の報道をみてみたい。
12月28日付韓国
『コリア・ヘラルド』韓国英字新聞は、「慰安婦問題に関わる日韓合意、与・野党の評価は真っ二つ」との見出しで、「12月28日の日韓外相会談に基づく慰安婦問題に関する合意に関し、与・野党は全く違った評価を下した。与党セヌリ党の李(イ)報道官は、日本政府の責任を明示した点で相当に進展した合意であると評価した。しかし、最大野党新政治民主連合の金(キム)報道官は、日本政府は法的責任を回避しており、絶対に受け入れられない、と強く非難した。...
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12月28日付韓国
『コリア・ヘラルド』韓国英字新聞は、「慰安婦問題に関わる日韓合意、与・野党の評価は真っ二つ」との見出しで、「12月28日の日韓外相会談に基づく慰安婦問題に関する合意に関し、与・野党は全く違った評価を下した。与党セヌリ党の李(イ)報道官は、日本政府の責任を明示した点で相当に進展した合意であると評価した。しかし、最大野党新政治民主連合の金(キム)報道官は、日本政府は法的責任を回避しており、絶対に受け入れられない、と強く非難した。」と報じた。
また、同日付韓国
『聯合ニュース』は、「慰安婦問題に関わる日韓合意、専門家の賛否分かれる」との見出しで、「韓国の時事問題専門家の評価が分かれている。賛成派は、日本側が公式に慰安婦に対する謝罪を表明したことを評価している。しかし、反対派は、合意事項に日本政府の法的責任について言及がないため受け入れられないとしている。また、元慰安婦の一部は、両国間の政治的決着に素直に従うことはできないし、合意結果を無視する、と表明している。」と伝えた。
一方、同日付中国
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英語版)』は、「中国、慰安婦問題に関わる日韓合意を受け、日本側にその他の歴史問題解決を要求」との見出しで、中国外交部の陸(ルー)報道官のコメントを引用して、「これまで中国は、日本は過去の歴史的過ちを反省し、責任を持って問題解決に当るべきだと主張してきた。従って、(今回の日韓合意を受けて)中国は、その他の問題についても日本が責任を持って対応するよう求める。」と報じた。
これまで何度も触れたとおり、韓国側は、1965年の日韓基本条約において、日本側の官民総額8億ドルの援助資金と引き換えに、賠償金の請求権を放棄する、との取り決めがあったにも拘らず、従軍慰安婦や強制徴用問題を蒸し返し、賠償を請求してきている。また、これまでの韓国政治体制をみても明らかなように、前大統領の政治的行為が、次の大統領によって否定されたり、刑事訴追されたりしてきている。従って、今回の朴(パク)政権の日本側との合意事項についても、政権が交代したときに反故にされる可能性は否定できない。
日本側としては、元慰安婦支援のために一括拠出する10億円の資金について、合意に基づく解決策が最終的かつ不可逆的でなくなった場合、拠出金の全額または一部でも返還させるとか、合意事項が守られない場合の賠償請求権に言及することも、今後用意される合意文書に織り込むべきではなかろうか。いやしくも、両国政府代表が合意した事項に関し、世論やマスコミ等の反対によって、また“ゴールポスト”が後退させられてしまうような事態が起きた場合に備えて。
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