英国では、警察が中国の秘密警察署と疑わき4か所を捜査したが、既に閉鎖され、違法行為の証拠はなかったという。海外ではこのような拠点が100か所以上あるとされている。
6月7日付英
『ガーディアン』:「中国が英国内の非公式警察署を閉鎖」:
英国のトム・トゥゲンハート安全保障相は、英国内にある中国のいわゆる「警察機能拠点」は閉鎖され、捜査によると、どの拠点でも違法行為は確認されていないと発表した。
英国はこれまで秘密警察に関する報道は「極めて懸念される」、「中国等の他国による国内での脅迫行為は全く容認できない」としていた。
中国はこのような拠点の存在を否定し、在英中国大使館を通して、批判内容は「完全な政治的嘘」だとし、大臣に抗議する声明を出している。
英国警察は非政府人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によるこうした活動実態の報告を受け、捜査していた。中国政府は以前、「海外拠点は、警察官ではなく地元のボランティアにより運営されており、中国人市民に向けた書類更新等のサービス支援を目的としている」としていた。
米国では今年4月、ニューヨークの中華街で、秘密警察を運営していた疑いで2人が逮捕されている。英国政府は世界でこのような拠点が100か所あることを把握しているとしている。一方、在英中国大使館のスポークスパーソンは、「海外警察署は存在しない」とし、偽情報の拡散と、中傷行為をやめるよう英政府に求めている。
6月6日付英『スカイニュース』:「英国内の中国警察拠点は容認できないと安全保障相」
英国は非公認拠点への調査結果を発表。外務英連邦省(FCDO)は英国内での海外拠点は容認できず、如何なる形態でも運営すべきでない」としている。
トゥゲンハート安全保障相は、海外在住の中国人を監視し、中国へ帰国するよう強要することを目的とする非公式拠点への調査結果を発表した。警察は違法と疑わき4か所を捜査したが、「違法行為の証拠はなかったものの、英国政府への報告がなく置かれていた。中国を出国し安全と自由を英国に求めた人々を懸念し、容認できない」としている。
調査対象となったのは、クロイドン、グラスゴー、ベルファスト等の拠点で、「離散コミュニティへの監視と嫌がらせ、場合によっては、合法的手続きなしで中国へ帰国するよう強要する」所だという。
中国は警察署の運営を否定してきているが、英人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」は110か所を認識しているとしている。中国大使館はそのような拠点は永久的に閉鎖したとしていた。今後見つかれば、法に準拠し早急な調査を行うとしている。
トゥゲンハート氏は、「中国当局は内政干渉を常に批判するが、政府非公認の拠点は置こうとする。これが世界中で同じように行われている疑いがある」と述べている。
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1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ぶ独立記念日である。しかし、先住民や擁護団体は、1778年に英国艦隊がオーストラリア大陸を植民地とするために入境してきた“侵略の日”だとして、全国で抗議活動を展開している。
1月26日付
『ロイター通信』は、「数千人が、オーストラリア・デイは“侵略の日”だと叫んでデモ行進」と題して、先住民や彼らを擁護する団体が、英国からの独立記念日ではなく英国による“侵略の日”だと抗議して、全国でデモ行進を行ったと報じている。
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ばれる、英国からの独立記念日である。
しかし、先住民のアボリジニや彼らの権利擁護の活動をしている団体が、英国艦隊が植民地化のためにシドニー湾に“侵略してきた日”だと抗議して、全国で数千人がデモ行進を行った。
ニューサウスウェールズ州都のあるシドニー市街では、デモ隊がアボリジニの旗を掲げて練り歩いたり、先住民の慣習である煙を焚く儀式を執り行った。
他の都市でも、同様の抗議活動が行われていて、豪州『ABCニュース』報道によると、南オーストラリア州アデレードでは約2千人が参加したという。
首都キャンベラでは、アンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)が先住民の人たちを尊重している、と演説していたが、その先住民は遥か6万5千年も前から豪州の地に移り住んできていた。
同首相は、“世界で最古の文化を継承してきた先住民とともに、豪州の独特な特性として認識していこう”と訴えた。
ただ、同首相は、「オーストラリア・デイ」は先住民にとって“苦難の日”と理解するも、この祝日を変更する考えはないとしている。
豪州市場調査会社ロイ・モーガン(1941年設立、メルボルン本拠)の世論調査によると、約3分の2が“オーストラリア・デイ”のままで良いとしていて、“侵略の日”とすべきだと回答したのは3分の1で、この結果は1年前と同じ比率だという。
この日の扱いについて多くの議論がされる中、例えば豪州最大の半官半民の通信会社テルストラ(1975年設立、本社メルボルン)は今年、従業員に1月26日を祝日とせずに出勤し、代替休日を取得することを容認した。
同社のビッキー・ブレイディ最高経営責任者(CEO)はSNS上で、“(235年前の)オーストラリア・デイ以降、多くの先住民が生命・文化等を蔑ろにされてきており、祝日と捉えるかどうか含めて一考する時期に来ている”と語り、彼女自身も出社している。
総人口2,500万人の豪州には、88万人の先住民が暮らしているが、経済的にも社会指標上でも劣っており、政府は“格差が定着”してしまっていることを理解している。
ただ、昨年半ばに返り咲いた中道左派の労働党政権は、先住民のことをしっかり認識し、また、彼らの生活に影響を与えるような決定を行う場合に事前に相談する等について、憲法上でも明文化するかどうか国民投票を行う考えを持っている。
同政府は、年内に国民投票を実施できるよう、3月に必要な法整備を行う意向である。
同日付『ザ・ガーディアン』紙は、「植民地問題に関わる討論が沸騰する中、数千人が豪州の独立記念日に侵略の日と叫んでデモ行進」として詳報している。
豪州の祝日当日、植民地化された当国の歴史について政治的にも社会的にも考察すべきだとの声が上がる中、豪州全土で数万人が抗議のデモ行進を行った。
メルボルン大学(1853年設立の公立大)のマルシア・ラントン教授(71歳、人類学・地理学専問、アボリジニ出身)は1月26日、オーストラリア・デイは植民地化を祝う日であってはならず、“いい加減に嘘をつくのは止め、豪州の過去の悲惨な歴史を見直すべきだ”と訴えた。
1月26については19世紀以降認識されてきていたが、オーストラリア・デイと呼ぶ祝日となったのは1994年になってからである。
しかし、それ以降、豪州の先住民が過去から現在に至るまで如何に虐げられてきたか、との問題提起が日増しに強くなってきている。
そこで、かつては花火を上げ、祭りで賑わう日であったが、今年のオーストラリア・デイ当日には、先住民や彼らを擁護する団体が、“侵略の日”、“生存の日”、“統治された日”等と叫んでデモ行進を行っている。
近年では、“オーストラリア・デイの期日変更”運動が盛んになっていて、シドニーでは、アボリジニ出身のリンダ=ジュン・コウ氏が、数千人の群集を前にして、白人の豪州人のための日ではなく、“235年前(1788年)から、彼らは私たちの文化や慣習を消し去ろうとしてきたが、私たちは今もこの地に留まっていて、どこへも行っていない”と訴えた。
アルバニージー首相は1月26日、現政権としてオーストラリア・デイの期日変更を提案する考えはないと表明したが、「ガーディアン紙重要世論調査」によると、期日変更を支持する豪州人は、2019年に15%だったが、2022年には20%、そして今年は26%と漸増してきている。
そこで、活動家らは、期日変更の必要性が益々高まってきていると主張している。
しかし、オーストラリア・デイを尊重するグループ、例えば保守党のピーター・ダットン自由党党首(52歳、2022年就任)は、先住民と英国人の文化・歴史が融合した特異性を有する豪州を祝うオーストラリア・デイは必要不可欠であり、“我々の国民性を誇りに思うべきで、ひとつの歴史を壊して別の歴史を作りあげる必要はない”と強調している。
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