世界貿易戦争(8月11日)
(FFR初会合が行われる・日米の対立点が鮮明に)
日米通商協議・FFRの初会合がワシントンで行われた。そもそもFFRという名称はFREE(自由)FARE(公正)RECIPROCAL(互恵的)と頭文字をとったもので、R(互恵的)は米国の要望で付け加えられたもので、そこには貿易黒字の恩恵を受けている日本は、自動車の安全規制などの非関税障壁や、農産物の関税障壁を取り払い、米国に恩恵を与えろという強い思いが込められており、この会合のネーミングからして米国は優位に立とうしている。...
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(FFR初会合が行われる・日米の対立点が鮮明に)
日米通商協議・FFRの初会合がワシントンで行われた。そもそもFFRという名称はFREE(自由)FARE(公正)RECIPROCAL(互恵的)と頭文字をとったもので、R(互恵的)は米国の要望で付け加えられたもので、そこには貿易黒字の恩恵を受けている日本は、自動車の安全規制などの非関税障壁や、農産物の関税障壁を取り払い、米国に恩恵を与えろという強い思いが込められており、この会合のネーミングからして米国は優位に立とうしている。当初から米国の戦略は自動車追加関税を交渉カードにFTA交渉に持ち込むものと予想されていたが、日本が警戒していた通り米国通商代表部・ライトハイザー代表は2国間の交渉を重視する立場を改めて強調し、これに対し茂木経済再生担当大臣は多国間の枠組みであるTPPに復帰することを求め、意見の隔たりは埋まらなかった。両政府は9月に改めて協議を行うことになったが、本番はおそらく9月下旬の日米首脳会談になるとみられる。米国がこれほどまでに2国間交渉にこだわる理由は、688億円という米国の労働者の雇用を奪う元凶となっている対日貿易赤字を少しでも減らしたいという思いから来ている。これはトランプ大統領の選挙公約でもあり、秋の中間選挙を前に、2国間貿易によって日本との貿易赤字縮小に向け具体的成果を出したいという焦りもある。
(トランプ大統領・日本車関税引き上げをカードに使ってくる可能性)
米中の貿易摩擦での制裁合戦でこれまで見てきたように、日本が米国の要求に応じない場合、米国が日本車の関税引き上げを実際に行う可能性は十分にある。日本の自動車メーカーは年間170万台の車を米国に輸出しているが、メーカーの試算によれば、実際に20%もの高額な関税をかけられた場合、1台当たり60万円を超える負担が生じるとしている。この負担を価格に転嫁した場合には現地での販売減少、輸出の減少につながり、自動車メーカーだけでなく、部品メーカーも含めた広い範囲で日本経済が打撃を受ける恐れが出てくるという。日本にとって米国の圧力をかわすための方策は、米国に多国間の自由貿易のメリットを説得しTPPに引き込むことしかない。日本が加盟するTPPは年明けの発効が見込まれている。日本と、EU・ヨーロッパ連合が経済連携協定に署名したことも記憶に新しい。経済連携の規模を見ると、TPPは世界GDPの13%に相当し、日EUの経済連携は世界GDPのおよそ3割を占める。TPPには、今後タイや英国が加盟の意欲を示しており、貿易の自由化を目指す経済連携の輪は、着々と世界に広がろうとしている。日本は米国に対し、2国間交渉にこだわらず、経済連携に入ったほうが得だと継続的に説得していく方法がひとつあるが、もうひとつ日本にとって参考になりそうなのはEUと米国の合意で使われた方法として、EUはライトハイザーとの閣僚交渉の横で合意のため別のルートを使うしたたかなやり方が考えられる。具体的には交渉がほぼ決裂している状態で、米EU首脳会談の当日にクドロー国家経済対策委員長のところに共同宣言文を別ルートから持ち込んで、クドロー委員長からトランプ大統領に上げ、ライトハイザーが反対していたにも関わらず、トランプ大統領の合意をとりつけた。ライトハイザーとの正面からの交渉だけを見ていてはだめで、伏線でいろいろやっていくしたたかさが必要とされている。さらに米EUの合意をよく読めば、輸入拡大するというコミットをEUはしたわけではないが、トランプ大統領が選挙民に対し成果を得たように見える仕立てが施されている。日本にもこうした知恵が必要とされている。
(日本に求められるのは毅然とした態度)
新たな通商協議は日米の対立の根が深いだけに、長期にわたることも予想されるが、日本としては、日米両国がお互いの経済や世界経済のためにどうするのが最善かという原則に立って、話し合いを続け、米国のルール違反には是々非々の姿勢で臨むことが求められている。日本車の関税引き上げが行われてしまった場合のシナリオも日本は想定しておく必要がある。その場合には米国からの農産物などの輸入品に対する関税を引き上げる対抗措置も当然必要となってくる。EUなどともスクラムを組み、場合によっては、WTOに提訴するといった毅然とした措置も必要となってくる。
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日米通商協議・意見に隔たり再協議へ(8月11日)
米国で行われた日米の新たな通商協議「FFR」で米国側はFTA(自由貿易協定)の締結も念頭に2国間の交渉を進めたい考えを示したのに対し、日本側はTPPをはじめ、多国間の自由貿易体制を重視する方針を示し、意見の隔たりは埋まらなかった。
両政府は来月改めて協議を行うことになった。日本政府は関税引き上げ措置適用を回避しつつトランプ政権との妥協点を探りたいとしている。
日米通商協議・初日の会合終る(8月10日)
日米の新たな通商協議「FFR」の初会合がワシントンで行われた。
協議は午前6時前に終了し、このあと茂木経済再生相が内容を説明する。
日本側は日米2国間FTA交渉入りに意欲を示す米国に、多国間自由貿易体制の意義を粘り強く訴えることにしている。
日本政府内には米国が自動車や農業分野でいっそう市場開放を求めるのではないか、警戒感が広がっている。
茂木経済再生相は「率直に意見交換しいい成果を出したい」と述べた。
新たな日米通商協議・難航も予想(8月9日)
日米の閣僚レベル(茂木経済再生担当相と米国・ライトハイザー通商代表部代表)による新たな通商協議(FFR)があす未明からワシントンで始まる。
日本側は米国国内で日本企業が多くの雇用を生み出していることなどを説明し建設的な対応を促す方針だが、米国は自動車、農業分野など一層の市場開放を求めると見られ、協議は難航も予想される。
日本側はTPPへの米国の復帰も念頭に多国間の自由貿易の異議を訴えることにしている。...
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日米の閣僚レベル(茂木経済再生担当相と米国・ライトハイザー通商代表部代表)による新たな通商協議(FFR)があす未明からワシントンで始まる。
日本側は米国国内で日本企業が多くの雇用を生み出していることなどを説明し建設的な対応を促す方針だが、米国は自動車、農業分野など一層の市場開放を求めると見られ、協議は難航も予想される。
日本側はTPPへの米国の復帰も念頭に多国間の自由貿易の異議を訴えることにしている。
トランプ政権は輸入車に関税を上乗せの構えをみせ貿易赤字の削減を求めるとみられている。
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中国政府・“関税上乗せ・米国に報復措置を準備” (8月4日)
米国・トランプ政権は、中国が米国のハイテク技術などに関する知的財産権を侵害しているとして340億ドル規模の中国からの輸入品に25%の関税を上乗せする制裁措置を発動したのに続いて、追加の制裁措置に向けた手続きを進めている。
これに対して中国政府は昨夜、米国からの輸入品に追加の関税を課す報復措置を準備していると発表した。
米国からの輸入品5207品目、600億ドル規模を対象とし5%~25%の関税を上乗せするとしている。...
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米国・トランプ政権は、中国が米国のハイテク技術などに関する知的財産権を侵害しているとして340億ドル規模の中国からの輸入品に25%の関税を上乗せする制裁措置を発動したのに続いて、追加の制裁措置に向けた手続きを進めている。
これに対して中国政府は昨夜、米国からの輸入品に追加の関税を課す報復措置を準備していると発表した。
米国からの輸入品5207品目、600億ドル規模を対象とし5%~25%の関税を上乗せするとしている。
この報復措置について、中国政府は“米国の制裁措置が発動されれば直ちに実施する”としていて、米中の対立がさらに深まることが懸念される。
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