米国メディアスタッフ“保釈”も連絡取れず(6月15日)
中国で一昨年国家の安全に危害を加える活動に関わっていた疑いで拘束された米国メディア、ブルームバーグの北京支局の中国人スタッフについて、米国にある中国大使館は今年1月に弁護士の要請を受けて保釈したと明らかにした。
これに対してブルームバーグはスタッフと依然として連絡が取れていないとしている。中国では2014年に反スパイ法の施行以降外国人も拘束されるケースが相次ぎ、国際社会から懸念の声があがっている。
米中高官・台湾めぐり会談(6月14日)
米国のサリバン大統領補佐官が、中国で外交を統括する楊潔チ政治局委員とヨーロッパのルクセンブルクで会談した。
会談後、バイデン政権の高官は記者団に対し、会談はおよそ4時間半にわたったことを明らかにしたうえで、「サリバン補佐官は、台湾をめぐって中国の抑圧的で攻撃的な行動と発言について、懸念を明確に表明した」と述べた。
これに対し、中国側の発表によると、会談で楊潔チ政治局委員は「台湾問題は両国関係の政治的な基礎にかかわり、うまく処理できなければ破壊的な影響を与える」と述べ、台湾への関与を強める米国を強くけん制した。
最先端半導体を巡る台湾の動き(6月11日)
台湾の地政学リスクが何度もささやかれる中、台湾では総額16兆円規模の未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。台湾「TSMC」など4企業が台湾全土に20の新工場を建設中か、完成させたばかりである。
台湾が半導体の巨額投資に突き進んでいる背景には半導体大国として独自の存在感を示したいという思惑があるとみられる。TSMC・マークリュウ会長はかつて、米中両国を念頭に「将来的に情報交換が不自由になり、太平洋の両側で自国の供給網を自己完結化させる動きが出ている」とした上で、「開発と製造にかかる費用が増大する」などと懸念を示したことからもわかるように、米中の政治的な動きにからめとられたくないというのが台湾=TSMCの本音のところである。...
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台湾の地政学リスクが何度もささやかれる中、台湾では総額16兆円規模の未曽有の半導体の投資ラッシュが起きている。台湾「TSMC」など4企業が台湾全土に20の新工場を建設中か、完成させたばかりである。
台湾が半導体の巨額投資に突き進んでいる背景には半導体大国として独自の存在感を示したいという思惑があるとみられる。TSMC・マークリュウ会長はかつて、米中両国を念頭に「将来的に情報交換が不自由になり、太平洋の両側で自国の供給網を自己完結化させる動きが出ている」とした上で、「開発と製造にかかる費用が増大する」などと懸念を示したことからもわかるように、米中の政治的な動きにからめとられたくないというのが台湾=TSMCの本音のところである。
もうひとつ、台湾が最先端の半導体大国になることで、有事の際にもウクライナのように扱われないようにするという布石を台湾・蔡英文総統は打っているのかもしれない。例えばウクライナに核兵器があれば、ロシアの侵攻を招かなかったと言われているが、蔡英文総統は核兵器に代わるカードとして半導体を考えているのではないかという仮説も成り立つ。
一方、米国としては最先端の半導体工場をリスクが高い台湾から米国本土に移転させたいと思っているが、今回の台湾の動きはその思惑に逆らっているようにも見える。
米国の強みはアーキテクチャー系の半導体会社が多いことであり、台湾が最先端半導体に強くても、現段階では米国抜きでは立ち行かないことは確かである。
懸念されるのは中国の動きである。台湾への武力侵攻も当然危惧されるが、政治的に台湾統一を叫ぶ中国は本音のところでは台湾の半導体産業を手中に入れたいと考えている。
TSMCの上層部を完全に親中国に変えてしまう工作や、例えばロシアがウクライナの穀物の輸出入を妨害して世界に打撃を与えているように、中国が台湾からの半導体の輸出入を妨害するなど嫌がらせをして圧力をかけてくることも考えられる。その時、日本や米国、世界の産業界はどう動くのかといった様々なケースをシミュレーションしておくべき時を迎えている。
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第二次世界大戦時の日本軍の作戦と重る中国の戦略(6月11日)
日本は第一次世界大戦でドイツ領であったマリアナ諸島・マーシャル諸島に進出し先ず占領した。1930年代にはこの辺りの10か所に米国との戦争を念頭に陸上基地を建設するなど、南太平洋は太平洋戦争における日本海軍の要衝であった。日本軍はここを拠点としてグアムやラバウルに侵攻した。
1941年12月8日にハワイの真珠湾を奇襲攻撃した日本海軍はわずか2時間で米艦隊と航空部隊を壊滅させ、太平洋戦争の口火が切られた。...
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日本は第一次世界大戦でドイツ領であったマリアナ諸島・マーシャル諸島に進出し先ず占領した。1930年代にはこの辺りの10か所に米国との戦争を念頭に陸上基地を建設するなど、南太平洋は太平洋戦争における日本海軍の要衝であった。日本軍はここを拠点としてグアムやラバウルに侵攻した。
1941年12月8日にハワイの真珠湾を奇襲攻撃した日本海軍はわずか2時間で米艦隊と航空部隊を壊滅させ、太平洋戦争の口火が切られた。太平洋戦争とは文字通り太平洋を舞台にした日本軍と連合国軍の戦闘であった。日本海軍の作戦はスケールが大きく、太平洋全般を逆コの字型に囲むように展開されたところが特徴的であった。
北はアリューシャン列島において日本軍はアッツ島、キスカ島、ダッチハーバー基地を攻撃し、1942年アリューシャンの島嶼を占領、連合国側に心理的な不安を与えた。一方、ハワイの北西1900メートルにあるミッドウェー島では1942年に空母4隻が沈められるなど惨敗し、このことが太平洋戦争のターニングポイントとなった。ソロモン諸島のガダルカナル島では連合軍に補給路を断たれ日本軍に多くの死傷者が出た。
西欧諸国にとっては南太平洋諸島には、日本軍に絡んだ負の記憶があるが、現在、中国がその南太平洋で存在感をアピールし始めて西側諸国の危機感が高まっている。きっかけは今年4月に中国がソロモン諸島との間で安全保障協定を交わしたことである。
中国は南太平洋諸国を取り込むことで日本と豪州、米国と豪州の縦のシーレーンを横のシーレーンで二つに引き裂こうとしている。同時に横のシーレーンを南米・チリまで延長し海底ケーブルを敷設しようとしている。このエリアに中国に拠点を置かれると豪州がオーカスで導入しようとしている原子力潜水艦の動きが手に取るようにわかってしまうリスクが生じる。
また中国は第2次世界大戦中に米軍施設として使用されていたキリバスの滑走路をそのまま軍事用滑走路として使うことを目論んでいる模様である。中国が今後、南太平洋島嶼国を旧日本軍のように基地だらけにしようとしている可能性は高い。
中国がロシアと協力しアリューシャンの島嶼にも拠点を構築する可能性もある。太平洋を専制国家の海にしてしまわないよう、日本は欧米との連携を強化するとともに南太平洋島嶼国に対しODAなどをうまく使うなどして慎重に民主主義陣営に取り込んでいくことが今後必要となる。
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シャングリラ会議開幕から見る安全保障の現状(6月11日)
毎年、激しい議論の応酬が展開されるシャングリラ会議(アジア安全保障会議)であるが、今年は例年とはかなり様相が異なったものとなっている。中国と同じ専制国家グループであるロシアが隣国・ウクライナに侵攻し、事実上の戦争状態となり世界の安全保障環境を一挙に悪化させているからである。
さらに北朝鮮の度重なるミサイル実験に対しても、国連安保理は中ロの拒否権発動により、非難決議1つ出せない機能不全状態に陥っていることも会議の行方に暗雲が立ち込めている要因の1つである。...
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毎年、激しい議論の応酬が展開されるシャングリラ会議(アジア安全保障会議)であるが、今年は例年とはかなり様相が異なったものとなっている。中国と同じ専制国家グループであるロシアが隣国・ウクライナに侵攻し、事実上の戦争状態となり世界の安全保障環境を一挙に悪化させているからである。
さらに北朝鮮の度重なるミサイル実験に対しても、国連安保理は中ロの拒否権発動により、非難決議1つ出せない機能不全状態に陥っていることも会議の行方に暗雲が立ち込めている要因の1つである。
岸田首相は会議で基調講演を行い、ロシアのウクライナ侵攻について「対岸の火事ではない」と中国を念頭に「普遍的なルールへの信頼が揺らいでいる」と訴えたが、会議に参加したアジア諸国の3分の1が親中国で3分の1が態度を明らかにしていないことが気がかりな点である。
9日に行われたインタビューでロシア・プーチン大統領はピョートル大帝と自らを重ね合わせ、350年前の帝国主義的価値観と現在のロシアの考え方が全く同じであることを明らかにした。もはや力の強い国が弱い国を征服しても問題がないという考えを隠そうともしていない。専制国家・中国、北朝鮮もほぼ同じ考えを持っているとみて間違いはない。
中国は南シナ海で力による一方的な現状変更の試みを続けており、「祖国統一を断固として擁護する」として台湾への武力侵攻を行う構えまで見せている。
こうした中、米中の国防当局トップがバイデン政権発足後初めての対面での対話を行った。台湾問題をめぐり米国側が「台湾海峡での一方的な現状変更の試みに反対する」としたのに対し、中国側は「1つの中国政策は中米間での共通認識のはずである」と強調した上で、「台湾への武器売却を進める米国に対して断固たる反対を表明する」などと激しい応酬となった。
唯一の救いは米中国防会談が最終的に軍事衝突を回避すべきという点では一致を見たことと、日中間で防衛当局間ホットラインを開設する動きが進んでいることである。
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