【米中覇権争い】
北朝鮮が核ミサイル開発を加速させる中、米国国防総省は、米国本土に向かってくるICBM(大陸間弾道ミサイル)を地上配備型の迎撃ミサイルで撃ち落とす実験に成功したと伝えた。
北朝鮮が新型弾道ミサイルの発射実験とする映像を公開した。北朝鮮外務省の報道官はG7サミットで安倍首相が「新たな制裁決議の必要性を力説した」などと非難した。また北朝鮮の報道官は談話でこれ以上米国に追従すると“日本に対する軍事攻撃の目標を在日米国軍基地以外にも拡大する”と威嚇した。
北朝鮮は今朝、国営メディアを通じて金正恩朝鮮労働党委員長の立ち合いのもと精密誘導システムを導入した新しい弾道ミサイルの発射実験に成功したと写真と共に発表した。今日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1面と2面に写真を掲載し、金委員長はこれまでより発射前の準備工程が高度に自動化され、発射時間をはるかに短縮できるシステムが完成したことで、敵を迅速に制圧、けん制できるようになったことに満足の意を示したと伝えている。またミサイルは予定された目標に7メートルの誤差で正確に命中したとしている。昨日北朝鮮東部のウォンサン(元山)付近から発射され、日本の排他的経済水域の中の日本海に落下したと推定される弾道ミサイルを指しているとみられる。
日本政府は北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて総理大臣官邸で安倍総理大臣や岸田外務大臣、稲田防衛大臣らが出席してNSC(国家安全保障会議)の閣僚会合を開いた。菅官房長官は記者会見を行い、「北朝鮮は東岸のウォンサン付近から日本海に向けて弾道ミサイルを発射し、ミサイルはおよそ400キロ飛行し新潟・佐渡島からおよそ500キロ、島根・隠岐諸島からおよそ300キロの日本海の排他的経済水域内に落下したと推定される。船舶や航空機からの被害情報は確認されていない。」と述べた。「弾道ミサイルの種類については総合的、専門的に分析する必要があり、現時点において詳細は分析中」と述べた。米国太平洋軍は発射されたのは短距離弾道ミサイル1発でミサイルは6分間飛翔し日本海に落下したとしている。
(G7サミットで北朝鮮包囲網構築も効果には疑問も)
安倍首相とトランプ大統領によって行われた日米首脳会談では50分の会談のうち半分以上が北朝鮮問題でのやりとりとなり、トランプ大統領は「北朝鮮問題は世界の脅威であり、いずれかの段階で絶対に解決しなければならない問題だ」との認識を示し、日米韓の連携でこの問題を解決していきたい意向を示した。これに対し、安倍首相も「今は対話のための適切な条件が整うにはほど遠く、国際社会が連帯して圧力をかけるべきだ」「地域の安全保障の為に米国の強力なプレゼンスを期待している」と応じるとともに、中国の役割が重要との考えで合意した。...
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(G7サミットで北朝鮮包囲網構築も効果には疑問も)
安倍首相とトランプ大統領によって行われた日米首脳会談では50分の会談のうち半分以上が北朝鮮問題でのやりとりとなり、トランプ大統領は「北朝鮮問題は世界の脅威であり、いずれかの段階で絶対に解決しなければならない問題だ」との認識を示し、日米韓の連携でこの問題を解決していきたい意向を示した。これに対し、安倍首相も「今は対話のための適切な条件が整うにはほど遠く、国際社会が連帯して圧力をかけるべきだ」「地域の安全保障の為に米国の強力なプレゼンスを期待している」と応じるとともに、中国の役割が重要との考えで合意した。その後に行われたG7サミットでは日米が主導して、北朝鮮問題での議論をリードし、各国は「北朝鮮問題は国際的な最優先事項であり、新たな段階の脅威となった」との認識を共有し、国際社会は北朝鮮包囲網に向けて動き出したが、肝心の中国とロシアはG7のメンバー国に入っていないのが実情である。一方、モスクワを訪れていた中国・王毅外相はロシア・ラブロフ外相と会談を行ない、北朝鮮問題に関して「対話を通じて解決すべきだ」と強調するなど日米の姿勢とは温度差が大きい。また韓国・文新政権は「人道支援のため、韓国の民間団体に北朝鮮側と接触することを承認した」と発表し、北朝鮮問題と人道支援の問題を切り離し、北朝鮮を援助する姿勢を見せている。このままでは抜け穴だらけの北朝鮮包囲網となり、北朝鮮の暴走を食い止めることは難しい。
(ミサイル技術を進化させる北朝鮮・米国もミサイル迎撃実験で対抗)
北朝鮮のキム国連次席大使は国連本部での記者会見で、21日の弾道ミサイル発射実験を「自衛のため」と正当化し、北朝鮮を非難する国連安全保障理事会の報道声明を拒否する意向を示している。北朝鮮は毎週ミサイル実験を行うとしていて、28日にも新たな実験を行ってもおかしくないが、こうした状況を米国も傍観しているだけではない。米国防総省によると北朝鮮によるICBMの米国本土への攻撃を想定した初の迎撃実験を、30日太平洋上空で行う予定で、具体的にはマーシャル諸島クエゼリン環礁から発射された模擬ミサイルを、カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地からの地上配備型迎撃ミサイル(GBI:Ground Based Interceptor)で迎撃するという。ただ、過去の経緯を見てみると米国のGBIミサイル迎撃実験は17回行われているものの、成功したのは約半分で、まだまだ技術的問題は多そうだ。日本としては今回の迎撃実験の結果も注視していきたい。
(肝心の中国の北朝鮮への圧力はどうなっているのか?)
中国に対して北朝鮮に金融面、エネルギー面(石油の禁輸)で圧力をかけさせているとされるトランプ大統領だが、そこに条件がついていたことが明らかになった。4月6日と7日に行われた米中首脳会談で習主席は「北朝鮮に圧力を強めるのに100日間の猶予を欲しい」とし、「その間は米国は北朝鮮への具体的な行動は控えてほしい」と要請したが、これにトランプ大統領も合意したという。米中首脳会談があった4月6日を起点と考えれば7月の半ばにはおおよそ100日目を迎えることになるので、北朝鮮の暴走がこれ以上続いた場合、この頃に中国がどういった行動をとるのかということが注目ポイントとなる。トランプ大統領との約束を中国が守れるのかどうかが、今後を占う上で非常に重要になる。
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