安全保障体制を構築することの難しさ(3月20日)
2008年、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が開かれ、ウクライナとジョージアの将来的な加盟を認めた。これについてプーチンは怒り狂い、当時開催されていた北京五輪閉幕と同時に、グルジアに電撃的に侵攻し、南オセチア、アブハジアを接収した。
これはプーチンのメッセージであった。つまり、NATOの東方拡大の動きに強く反発するプーチンにとってはグルジアとウクライナがNATOに参加すること自体がレッドラインであり、「グルジアとウクライナがNATOに参加する時は黙ってはいない」というメッセージであった。...
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2008年、NATO(北大西洋条約機構)の首脳会議が開かれ、ウクライナとジョージアの将来的な加盟を認めた。これについてプーチンは怒り狂い、当時開催されていた北京五輪閉幕と同時に、グルジアに電撃的に侵攻し、南オセチア、アブハジアを接収した。
これはプーチンのメッセージであった。つまり、NATOの東方拡大の動きに強く反発するプーチンにとってはグルジアとウクライナがNATOに参加すること自体がレッドラインであり、「グルジアとウクライナがNATOに参加する時は黙ってはいない」というメッセージであった。
プーチンがしばしば引き合いに出すのは、1990年代初頭に、NATOと米国がロシアに対して言ったという「1インチたりともNATOは拡大しない」という口約束である。プーチンからすればこの約束をNATOと米国が反故にしたことになる。
プーチンが発したシグナルを当時、副大統領であったバイデン大統領は全く理解しておらず、2009年、当時のウクライナ大統領に「もしウクライナがNATO加盟を選択するのであれば、米国は強く支持する」と伝えていたことがわかっている。
この5年後の2014年、ロシアは世界の批判をよそにクリミアに侵攻しそのまま併合した。その一方で、米国とウクライナの親密な関係はその後も継続された。クリミア侵攻でウクライナ軍が弱かった反省もあり、2015年4月に米軍がウクライナ軍を訓練した。さらに9月にはNATOがウクライナ軍訓練に資金を拠出した。
2021年9月にはNATOを中心とした15か国による多国籍軍とウクライナ軍が大規模な軍事演習を行った。これにプーチンが刺激されないはずがない。
2022年、ロシアは遂にウクライナに軍事侵攻した。2008年の時と同じく北京五輪が閉幕してから実行に移された。2008年から続くプーチンの怨念が今回のウクライナ侵攻を引き起こしたといえる。
驚くべきことに、今になってバイデン大統領は「ウクライナはNATOではない。軍事的に支援する義務はない」と吐き捨てるように言った。さらに他のNATO諸国も自分達がまきこまれることを嫌がっている。
ウクライナ上空に飛行禁止空域を設定して欲しいというウクライナ・ゼレンスキー大統領の思いはNATOから拒絶された。ゼレンスキー大統領はNATOから見捨てられたという思いを強く抱えているに相違ない。
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ロシア・“ウクライナで生物兵器開発”主張で安保理緊急会合(3月19日)
国連の安全保障理事会では、ロシアが「ウクライナで生物兵器が開発されていて、米国が関与している」と一方的に主張していることについて再び会合が開かれたた。
会合では、ロシアのネベンジャ国連大使が「生物兵器の開発計画を裏付ける新たな資料が見つかった」と述べ、これまでの主張を繰り返した。
これに対し、国連の軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長はそうした計画は把握していないと報告し、各国からも「事実無根だ」という非難が相次いだ。...
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国連の安全保障理事会では、ロシアが「ウクライナで生物兵器が開発されていて、米国が関与している」と一方的に主張していることについて再び会合が開かれたた。
会合では、ロシアのネベンジャ国連大使が「生物兵器の開発計画を裏付ける新たな資料が見つかった」と述べ、これまでの主張を繰り返した。
これに対し、国連の軍縮部門のトップを務める中満泉事務次長はそうした計画は把握していないと報告し、各国からも「事実無根だ」という非難が相次いだ。
フランスのドリビエール国連大使は「うその情報を広げる企ては、みずから生物兵器や化学兵器を使う前兆かもしれない。もしウクライナで、そうした兵器が使われれば責任はロシアにある」と述べた。
このあと、ロシアのネベンジャ国連大使が再び発言し「新たな事実は近い将来に明らかになるはずだ」と述べ、各国を強く牽制した。
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プーチン大統領が演説・その途中画面が突然切り替わるトラブル(3月19日)
モスクワで、ロシアがウクライナ南部のクリミアを一方的に併合して8年となる18日、記念イベントが開かれた。
軍事侵攻を正当化し、支持を呼び掛けるプーチン大統領の演説。ロシアの国営テレビで放送されていたが、その途中で突然画面が切り替わるトラブルがあった。その後改めて演説がすぐ放送され、ロシア大統領府の報道官は「技術的障害で引き起こされた」と説明した。
ただ国営テレビの放送でプーチン大統領の演説の中断は異例で、インターネット上では「何が起きたのか」などと波紋が広がっている。
埼玉県戸田市・ウクライナからの避難民に仮設住宅を確保(3月19日)
政府はロシアの軍事侵攻によりウクライナから避難してきた人の受け入れを表明していて各地の自治体で協力や支援の動きが出ている。こうした中、埼玉県戸田市も受け入れに協力する方針を示し区間整理のために建設された市営の仮設住宅6棟を確保した。
仮設住宅は1棟につき3人から4人での利用を想定しているが家族構成や個別の事情を考慮して柔軟に対応していく。今後、国からの要請があれば避難してきた人を受け入れ就労支援や生活相談などへの対応も検討することにしている。...
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政府はロシアの軍事侵攻によりウクライナから避難してきた人の受け入れを表明していて各地の自治体で協力や支援の動きが出ている。こうした中、埼玉県戸田市も受け入れに協力する方針を示し区間整理のために建設された市営の仮設住宅6棟を確保した。
仮設住宅は1棟につき3人から4人での利用を想定しているが家族構成や個別の事情を考慮して柔軟に対応していく。今後、国からの要請があれば避難してきた人を受け入れ就労支援や生活相談などへの対応も検討することにしている。
戸田市は「県や関連団体との連携のもと個々の状況に応じた適切な支援につなげたい」としている。戸田市役所の映像。
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ウクライナ最新情勢(3月19日)
ロシア軍が士気の高いウクライナ軍に大苦戦している。英国国防省はロシア軍の動きが全ての戦線で勢いを失っていると分析している。これまでに1万人余りのロシア兵が死亡しているという情報もある。BBCによると侵攻を指揮するロシア軍将官約20人のうち5分の1が戦死していると報じられている。
ロシア軍の士気が下がっているのは間違いないとみられるが、その大きな要因としてウクライナ軍に電子情報戦で圧倒的に負けていることを挙げる専門家もいる。...
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ロシア軍が士気の高いウクライナ軍に大苦戦している。英国国防省はロシア軍の動きが全ての戦線で勢いを失っていると分析している。これまでに1万人余りのロシア兵が死亡しているという情報もある。BBCによると侵攻を指揮するロシア軍将官約20人のうち5分の1が戦死していると報じられている。
ロシア軍の士気が下がっているのは間違いないとみられるが、その大きな要因としてウクライナ軍に電子情報戦で圧倒的に負けていることを挙げる専門家もいる。
ウクライナ軍は米軍などの指導を受けて通信を傍受し、ロシアの将官がいる位置を正確に割り出した上でトルコ製自律型ドローンや、操縦式ドローンをうまく活用し、ピンポイントで正確に攻撃しているという。
通常、ドローン攻撃を防ぐにはジャミングという通信妨害を行い、操縦者の位置を割り出し操縦者を殺害する必要があるが、こうした電子情報戦をロシアはうまく展開できていない。ロシアの通信部隊の数も少なく、これもロシア軍の連携がうまくいかない一因になっている。ロシア製ドローンの精度もかなり悪いようである。
手詰まり感が漂い始めているロシア軍だが、トルコ政府高官によるとプーチンが、停戦に向けてゼレンスキー大統領との直接会談にも前向きな姿勢を見せ始めているという情報もある。
プーチンがウクライナに求めている停戦条件は「NATO加盟を断念し中立化すること」「非武装化」「ロシアのクリミアでの主権を認め東部親ロ派支配エリアの独立承認」「ロシア語の保護」である。
一方でウクライナ側の停戦条件は「パートナー国がウクライナの安全を保障する」「ロシア軍部隊の完全撤退」「ウクライナの主権と領土一体性の回復」で、特にプーチンは「ロシア軍部隊の完全撤退」には応じないとみられ、両国が折り合うことはなかなか難しいとみられる。
対話路線が頓挫すればこのまま泥沼の戦闘に突入する可能性が高い。ロシア軍がどこかのタイミングで化学兵器などを使用する可能性もないとはいえない。ただ、5月にはロシアの戦争資金が枯渇すると言われており、それまでにもう1度停戦の動きが出てくる可能性もある。
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