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104年前からのバトン、4人のサムライ達へ(8月22日)
日本が初めてオリンピック陸上競技の場に登場したのは、初参加のストックホルム大会(1912)である。このとき短距離に三島弥彦、マラソンに金栗四三が出場。しかし、三島は200mで最下位となり予選敗退。金栗はレース途中に倒れて民家に担ぎ込まれ、公式記録上は「行方不明」となるなど、初の五輪はほろ苦いデビューとなった。100m走でも決勝に進めなかった三島はレース後、金栗に「日本人にはやはり短距離は無理なようだ」と語ったという。...
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日本が初めてオリンピック陸上競技の場に登場したのは、初参加のストックホルム大会(1912)である。このとき短距離に三島弥彦、マラソンに金栗四三が出場。しかし、三島は200mで最下位となり予選敗退。金栗はレース途中に倒れて民家に担ぎ込まれ、公式記録上は「行方不明」となるなど、初の五輪はほろ苦いデビューとなった。100m走でも決勝に進めなかった三島はレース後、金栗に「日本人にはやはり短距離は無理なようだ」と語ったという。
それから104年。リオデジャネイロ・オリンピックスタジアムで行われた男子400mリレー。表彰台で世界最速の男ウサイン・ボルト率いるジャマイカの横に並んだのは、日本から来た4人のサムライたちだった。“日本陸上史上最強”の四人衆・山縣亮太、飯塚翔太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥は、全体の2位で予選を突破。20日の決勝には、再び予選と同じ走行順で挑んだ。4人はトラックへの入場時に最年長・飯塚の発案で、揃って侍の抜刀ポーズを決め、息の合ったところを見せる。第5レーンの日本は、五輪3連覇中のジャマイカの右隣。号砲とともにロケットスタートした山縣から飯塚、チーム最年少の桐生へと流れるようにバトンが託され、最終走者のケンブリッジはボルトと並んでゴールに向かって駆け出した。バトンを渡し終えた桐生の雄叫びに押されるように、加速したケンブリッジは、猛追を見せるアメリカ、カナダを振り切りボルトに次いで2番手でゴール。歴史が変わった瞬間だった。北京五輪の銅を上回る、アジア新記録樹立での銀メダル。北欧ストックホルムでの初挑戦から一世紀余。ここ南米の地で日本のスプリンターたちは、遂に世界のトップクラスへ上り詰めた。百年にわたる先達からのバトンは見事な形で受け継がれたのだった。
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二人の最強女王・その功績に惜しみない賞賛を(8月20日)
かつてレスリング界に「霊長類最強」の異名を誇った男がいた。ロシアの国民的英雄、アレクサンドル・カレリンである。最重量級で国際大会13年間無敗。そのカレリンですら成し得なかったオリンピック4連覇に、不敗神話を持つ伊調馨と吉田沙保里が挑んだ。だが、二人の最強女王の戦いの行方は明暗が分かれてしまった。
58キロ級決勝、伊調は第2ピリオドでリードを奪われながら、ラスト6秒からの大逆転。女子アスリート史上初の五輪4連覇を成し遂げた。...
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かつてレスリング界に「霊長類最強」の異名を誇った男がいた。ロシアの国民的英雄、アレクサンドル・カレリンである。最重量級で国際大会13年間無敗。そのカレリンですら成し得なかったオリンピック4連覇に、不敗神話を持つ伊調馨と吉田沙保里が挑んだ。だが、二人の最強女王の戦いの行方は明暗が分かれてしまった。
58キロ級決勝、伊調は第2ピリオドでリードを奪われながら、ラスト6秒からの大逆転。女子アスリート史上初の五輪4連覇を成し遂げた。一方、伊調ら日本勢の金メダルラッシュのなか、53キロ級に出場した吉田も危なげなく決勝に進出。ところが、アメリカのマルーリスが一瞬の隙を突き、バックを奪って逆転。劣勢のまま残り時間、吉田は自慢の高速タックルも潰され、勝利が手から滑り落ちていく。霊長類最強の称号を受け継いだ女王の4大会目のメダルの色は、カレリンと同じく「銀」となった。今回リオ五輪選手団の主将にも任じられていた吉田。「取り返しのつかないことをした」試合後に号泣しながら振り絞った謝罪の言葉は、どれほど彼女が責任の重さを感じていたかを思い知らされた。
2人が前回のロンドンで、日本の女子選手で初めて五輪3連覇を達成した後も、メディアに登場するのは吉田が中心。あまりマスコミの取材が得意ではないと語る伊調はテレビ出演も控え目だった。その分、多くのイベントなどにも出席していた吉田は、レスリングの広報的な役割まで以て任じていたように見えた。一手に取材を引き受ける吉田に対し、伊調は常に大きな感謝の念を持っていたという。今回全6階級のうち4階級で金メダルに輝いた女子レスリング。これも正式種目となったアテネ以来、伊調・吉田がレスリング界全体を牽引していったからこそ。是非二人で胸を張って帰国して貰いたい。
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高い世界の壁・日本の女子球技が目指す道は?(8月19日)
リオ五輪バレーボール女子。日本は世界ランク1位の優勝候補・アメリカと準々決勝で対戦。この4年間、一度もアメリカには勝てていない全日本女子。一時リードを奪う面も見られたが、結局0-3のストレートで敗れ、ロンドン大会から2大会連続のメダル奪取はならなかった。
試合後、キャプテンを務めた木村沙織は「目指していたメダル獲得に届かなかったのはとても残念だったが、本当にいろんな方に感謝の気持ちを伝えたいと思う」と声を詰まらせた。...
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リオ五輪バレーボール女子。日本は世界ランク1位の優勝候補・アメリカと準々決勝で対戦。この4年間、一度もアメリカには勝てていない全日本女子。一時リードを奪う面も見られたが、結局0-3のストレートで敗れ、ロンドン大会から2大会連続のメダル奪取はならなかった。
試合後、キャプテンを務めた木村沙織は「目指していたメダル獲得に届かなかったのはとても残念だったが、本当にいろんな方に感謝の気持ちを伝えたいと思う」と声を詰まらせた。
今大会の全日本女子は、予選リーグ初戦で韓国に敗れるなど苦しい戦いを強いられた。ブラジル、ロシアからは1セットも奪えず、カメルーンとアルゼンチンに勝って2勝3敗でなんとか決勝トーナメントに進出したものの、目標としていたメダル争いからは大きな差があった印象だった。眞鍋監督が「女子バレーも大型化、パワー…ロンドンより遥かに高い選手が来たなという感じ」語った通り、今回のリオ五輪出場国は益々大型化が進み、日本は参加国中では最も平均身長が低かった。4大会連続での五輪出場を果たした木村沙織の後継者と目されるのは、今回は選考から漏れた20歳の古賀紗理那。だが、彼女も180cmと木村より5cmも低く、世界水準からみれば中型選手に過ぎない。現在のジュニアのメンバーを見てもチームの大型化は容易ではなかろう。眞鍋監督は高さ不足克服に、レシーブやサーブの精度向上に取り組んで大会に臨んだが、逆にサーブレシーブで崩される場面も再三見られた。高さ以外の課題も多い。
しかし、同じく準決勝で米国に敗れたものの、上位チームを撃破して今大会で躍進を見せた女子バスケットボール代表の例もある。体格で劣る日本チームにしかできない戦い方がある筈だ。2020に向けた新チーム作りに期待したい。
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流した涙の数だけ強くなる・25年目の栄冠(8月18日)
「本当に苦しい…苦しいオリンピックでした。みんなに感謝しています」福原愛の目から涙がとめどなく零れ落ちた。リオ五輪・卓球女子団体3位決定戦で日本(福原愛・石川佳純・伊藤美誠)はシンガポールに3-1で勝利。ロンドンの銀に続く2大会連続のメダルを手にした。4大会連続出場のキャプテンの福原。個人戦ではこれまでベスト8が最高だったが、過去最高の4位入賞。あと一歩でメダルに手が届かず、団体戦にかける思いは一層強くなっていたことだろう。...
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「本当に苦しい…苦しいオリンピックでした。みんなに感謝しています」福原愛の目から涙がとめどなく零れ落ちた。リオ五輪・卓球女子団体3位決定戦で日本(福原愛・石川佳純・伊藤美誠)はシンガポールに3-1で勝利。ロンドンの銀に続く2大会連続のメダルを手にした。4大会連続出場のキャプテンの福原。個人戦ではこれまでベスト8が最高だったが、過去最高の4位入賞。あと一歩でメダルに手が届かず、団体戦にかける思いは一層強くなっていたことだろう。勝利の瞬間、かつて試合に負けると大泣きをしていたあどけない天才少女は、あの頃に戻ったかのように感情が溢れ出していた。それ程までに厳しいメダルへの道のりだった。
団体準決勝のドイツ戦では5試合目まで激闘が繰り広げられた。最後にイン・ハンとのシングルスに臨んだ福原は最終5ゲームで猛烈に追い上げる。相手にマッチポイントを奪われながら凌ぎ切ったかに見えたその瞬間。相手ボールは非常に際どい角度でコートのエッジを掠め、日本の決勝進出は絶たれてしまった。全試合接戦に継ぐ接戦。勝敗はエッジボールのように紙一重だった。それでも「負けの責任は私にある」というキャプテンの悲壮な覚悟に、エース石川佳純が応える。個人戦では脚の痙攣というアクシデントで1試合しか戦えなかった借りを返すように、団体戦シングルスは全勝。圧巻のプレーでチームを鼓舞し、失いかけた流れを再三引き戻した功績は絶大だ。ブロンズメダルポイントを決めた伊東美誠も、シングルス・福原とのダブルス共に何度も苦しい状況を耐えきった。正に3人が支え合い掴んだ勝利だと言えよう。
この大会中、卓球を始めてちょうど25年になったと明かした福原。2020年には31歳。涙を積み重ねた彼女の卓球人生は発展途中だ。
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錦織およそ一世紀ぶりの“ライジング・サン“(8月17日)
120年前、第一回近代オリンピック・アテネ大会で行われた正式競技はわずか9つだった。硬式テニスはその時から五輪の場で行われている由緒正しい競技である。今回のリオデジャネイロ五輪には今年6月、生涯グランドスラムを達成したジョコビッチをはじめBIG4のうち3人までが出場。マレーとナダルはそれぞれ開会式で母国選手団の旗手も務めた。五輪種目の中でも特別な注目を集めるテニス。そこに日本人選手では96年ぶりのメダリストが誕生した。...
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120年前、第一回近代オリンピック・アテネ大会で行われた正式競技はわずか9つだった。硬式テニスはその時から五輪の場で行われている由緒正しい競技である。今回のリオデジャネイロ五輪には今年6月、生涯グランドスラムを達成したジョコビッチをはじめBIG4のうち3人までが出場。マレーとナダルはそれぞれ開会式で母国選手団の旗手も務めた。五輪種目の中でも特別な注目を集めるテニス。そこに日本人選手では96年ぶりのメダリストが誕生した。現在世界ランク7位、エアケイこと錦織圭だ。
1回戦から3回戦まではストレートで快勝。準々決勝は驚異的な身体能力を誇るモンフィス相手にタフなゲームをしのぎ切り、フルセットの激闘を制した。しかし勝てばメダル確定の準決勝ではマレーに持ち味を完封され敗退。銅メダルをかけた3位決定戦の相手は、これまで10回対戦して1度しか勝ったことのないスペインの至宝ラファエル・ナダルだった。
第1セットは幸先よく6-2と錦織が先手を取る。第2セットも5ゲームを先取したが、マッチポイントを迎えてからダブルフォールトなどミスを連発。猛烈な追い上げを見せたナダルに逆転され、タイブレークの末このセットを落としてしまう。そして迎えた最終セット。錦織は徐々に精度を上げていくと、先にブレークを奪い、そのまま一気に逃げ切って見事勝利を収めた。3回目の五輪の舞台でついに表彰台に上った錦織。「こういう試合を競り勝って勝てたので、すごく大きな経験値となると思います」ツアー獲得ポイントも高額な賞金もないオリンピックの闘い。だが、この特別な舞台を代表として戦ったことは、彼にプライスレスな価値をもたらすに違いない。今月29日からは四大大会・全米オープンに参戦。目指すは頂点の座だ。
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